「ウチの会社にそんな問題があったなんて…、最初にわかってたら…」
M&Aのあと、何も知らずに社員を引き継ぎ、半年後に突然、未払い残業の請求が来たとしたら
あなたならどうしますか?
でも、もし事前につぎのポイントだけ見ておけば、あとからトラブルが起こることもなく、安心して経営に集中できていたかもしれません。
この記事では、M&Aで会社を引き継ぐ際に見逃してはいけない「労務の地雷」と、かんたんにチェックする方法をまとめています。
かんたん聞き取りで社内の火種を見つける
「ウチの会社にそんな問題、なかったですよ」と言われて安心していませんか?
でも、ほんとうの空気は、社員の声を聞かないと見えてきません。
【ステップ】
引き継ぎ前に、社員3〜5人に1対1で話を聞く
質問は「前の会社でこまったことは?」「仕事で気になることは?」などシンプルに
メモを取りながら、共通するテーマが出るかチェックしましょう
【事例】
ある事業所では、3人に話を聞いたところ、全員が「タイムカードが意味ない」と言った。その後、未払い残業が数百万円分あると判明。
【すぐやること】
→ 2人以上に話を聞いて、「今まで何にいちばん困ってた?」とたずねてみましょう。
書類のズレでトラブルのタネを見つける
見えないリスクは、ふつうの書類にヒントがあります。
とくに就業ルールと実際の働き方が合ってないことが多いです。
【ステップ】
会社の「就業規則」や「労働条件通知書」「賃金台帳」を確認し
実際のシフトやタイムカードと見比べる
休み時間・残業・休日のルールにズレがないか確認する
【事例】
就業規則に「みなし残業20時間」とあるのに、毎月40時間残業があると発覚。
未払い分の請求トラブルに。
【すぐやること】
→ 就業規則の就業ルールと実際のシフトを見くらべて、ズレがないかをざっと見てみましょう。
3.たった1枚の表で人の地雷を見つける
問題社員は見た目ではわかりません。でも人事データの一覧にヒントがあります。
【ステップ】
氏名・入社日・役職・給与・過去の処分・異動などを一覧にまとめる
急に昇給した人、異動が多すぎる人、減給歴がある人などをマークする
「どうして?」を関係者に聞いて裏をとる
【事例】
ある会社で、異動が年4回の社員が見つかり調査したところ、複数の部署でトラブルを起こしていたと判明。
【すぐやること】
→ 社員の一覧を作って、異動・昇給・処分歴が、一般的な人と違う人を見つけてください。
秘密の口コミで会社の“裏の顔”を知る
買収前に見る会社紹介資料は、だいたい「よく見せて」います。
でも、ネットの声にはかくされた問題点が出ることがあります。
【ステップ】
Googleや口コミサイト(「転職サイト」など)で会社名を検索する
「残業」「人間関係」「上司」「ストレス」などのキーワードで絞って見る
内容がくり返し出てくる点がないかを確認する
【事例】
ある会社の口コミで「新人が1年もたない」と何度も書かれていた。
調べてみると、新人に無理なノルマを課す文化が残っていた。
【すぐやること】
→ 買収する会社名+「残業」「働き方」などで検索してみましょう。
社員との「1分約束」で信頼をつくる
せっかく受け継いでも、社員が「この人には言えない」と感じたら、トラブルは水面下に。
1分でもいいので、約束とあいさつのセットが効きます。
【ステップ】
初日に社員に「困ったらいつでも言ってください」とひと声かける
「やりにくいルールがあれば変えていきます」と伝える
書いたメモを残して、あとで行動で示す
【事例】
あるオーナーが「自分は話を聞きます」と言っただけで、社員から「前の社長とちがう」と信頼を得た。
→ その後、トラブル予防の相談が自発的に来るように。
【すぐやること】
→ あいさつの中に「遠慮なく教えてください」と一言そえてみましょう。
労務DDシートで見落としをゼロにする
リスクを見つけるには「見るべきチェックリスト」があると安心です。
実は、プロが使うひな型シートを、かんたんに自社用にアレンジできます。
【ステップ】
人事・労務デューデリジェンスのチェックリストを入手
自社の項目(雇用契約・労働時間など)にそって項目をしぼりましょう。
チェック担当者と役割をわけて対応するといいかもしれません。
【事例】
中小M&A専門の社労士が使っている30項目チェック表をベースにした企業は、その後の労務トラブルゼロを実現。
【すぐやること】
→「労務デューデリ チェックリスト」で検索し、ひな型をダウンロードしてみてください。

この記事では、簡単なチェックで、会社をうけついだときに見えないリスクをへらす6つの方法をお伝えしました。
社員の声を聞くこと、書類を見くらべることで、ちょっとした手間でトラブルをさけることができます。
これを知っているだけで、あとで「知らなかった…」と悔やむことを防げます。
あなたの会社と社員を守るために、いま行動することがとても大切です。
まずは社員に「困っていることはありますか?」と聞いてみてください。
小さな一歩が、大きなトラブルをよけるカギになります。